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不動産業者の営業トークを自分で数字検証する方法:騙されないための実務チェックリスト

不動産業者の提案を検証するには、3つの数字を自分で計算すればいい。実質利回り、返済比率、デッドクロス発生年。この3つが業者の提示する数字と一致しなければ、その提案には何かが隠れている。

営業マンは嘘をつかない。ただ、都合の悪い数字を省略する。「表面利回り8%」は事実かもしれない。しかしその数字には、管理委託費、固定資産税、空室損失、修繕積立金が含まれていない。この記事では、業者から提案書を受け取ったあとに自分でやるべき検証手順を、具体的な計算式つきで解説する。

ステップ1:表面利回りを実質利回りに変換する

業者が最初に見せる数字は、ほぼ例外なく表面利回りだ。

表面利回り = 年間満室賃料 ÷ 購入価格

この数字は「すべての部屋に365日入居者がいて、経費がゼロ」という現実には存在しない前提で計算されている。検証するには、以下の経費を差し引く。

実質利回り = (年間賃料 × 稼働率 − 年間経費) ÷ 購入価格

差し引くべき年間経費の内訳:

項目 目安
管理委託手数料 賃料の5〜7%
固定資産税・都市計画税 購入価格の1〜1.5%程度
火災・地震保険料 年5〜10万円(区分の場合)
修繕積立金 月額8,000〜15,000円(新築時。10〜15年後に2〜3倍に値上げ)
空室損失 稼働率85%で計算(空室率15%)

具体例:業者提案「表面利回り8%」の検証

物件価格2,500万円、月額賃料16.7万円(年間200万円)の区分ワンルームを例に計算する。

業者の数字:200万円 ÷ 2,500万円 = 表面利回り8.0%

自分の検証

  • 年間賃料(稼働率85%):200万円 × 0.85 = 170万円
  • 管理委託手数料(5%):−10万円
  • 固定資産税・都市計画税:−25万円
  • 火災・地震保険:−7万円
  • 修繕積立金(月1.2万円):−14.4万円

年間手残り:170万 − 56.4万 = 113.6万円

実質利回り:113.6万 ÷ 2,500万 = 4.5%

表面8%が実質4.5%に。ここからローン金利(変動2〜3%台)を引くと、手元に残るイールドスプレッドは1〜2%台まで縮む。金利が上昇すればキャッシュフローはマイナスに転落する。

この計算を自分でやるかどうかが、騙される人と騙されない人の分岐点だ。

ステップ2:返済比率を確認する

返済比率は、家賃収入に対するローン返済額の割合。金融機関が審査で使う指標だが、投資家自身も検証すべき数字だ。

返済比率 = 年間ローン返済額 ÷ 年間満室賃料

安全ラインは50%以下。ただし、これは「金利5%でストレスをかけた状態」で計算する。業者が現在の低金利(変動1.5〜2%台)で返済比率を見せてきた場合、金利5%で再計算すること。

業者は「今の金利なら返済比率40%」と言う。しかし変動金利が5%に上昇したシナリオで再計算すると返済比率が60%を超える物件は珍しくない。その場合、空室が1戸出ただけでキャッシュフローが破綻する。

ステップ3:デッドクロス発生年を特定する

デッドクロスとは、ローンの元本返済額が減価償却費を上回る状態。帳簿上の利益が膨らむのに手元の現金は減っていく——税金だけが増える地獄に陥る。

業者は減価償却による「節税効果」を強調するが、その節税が終わったあとの数字を見せることはほとんどない。

確認方法

  1. 建物の減価償却費を算出する(建物価格 ÷ 耐用年数)
  2. 各年のローン元本返済額を算出する(元利均等返済の返済予定表から利息部分を差し引く)
  3. 元本返済額が減価償却費を上回る年がデッドクロス発生年

築古木造(耐用年数4年)を購入した場合、4年で償却が終了する。5年目以降は減価償却費がゼロになり、ローン元本返済額の全額が「帳簿利益を押し上げる見えない負担」に変わる。

業者に聞くべき質問:「この物件のデッドクロスは何年目に発生しますか?」——まともな業者は即答できる。答えられない業者からは買わない。

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典型的な営業トークと検証ポイント

「節税になります」

減価償却による損益通算で給与所得を圧縮できるのは事実。しかし売却時に減価償却累計額が譲渡所得に加算される。保有中の「節税」は課税の繰り延べにすぎない。売却時の税額まで含めたトータルの損益を計算しなければ、節税の実態は見えない。

「年金代わりになります」

ローン完済後に家賃収入が年金の代わりになるという理屈。しかし完済までの30年間で修繕積立金は2〜3倍に値上がりし、築30年超の物件は大規模修繕か建て替えの判断を迫られる。「年金代わり」の家賃から修繕費と管理費を引いた残額を計算すること。

「入居率99%です」

RENOSYのような不動産テック企業が強調する入居率。しかし自社マージンが上乗せされた都心築浅ワンルームを扱っている以上、高入居率は当然の結果だ。問題は入居率ではなく、マージン込みの価格で買ったあとの実質利回りが何%かということ。入居率99%でも実質利回りが2%台では投資として成立しない。

「新築なので安心です」

新築プレミアムは、最初の入居者が退去した時点で消失する。市場価格は購入価格から20〜30%下落する。3年後に売却しようとすると、ローン残債が市場価格を上回る「オーバーローン」状態になり、自己資金を追加しなければ売れない。

検証に使える実務ツール

Yahoo!知恵袋には「この収支シミュレーション、詐欺ですか?」という質問が定期的に投稿される。多くの人が業者の数字に違和感を覚えながら、自分で検証する手段を持っていない。

必要なのは、業者の提案書の数字を「そのまま入力するだけ」で実質利回り・返済比率・デッドクロス発生年が出る計算ツールだ。

不動産投資スタートガイドには、以下の印刷用ツールが付属している:

  • ROI計算テンプレート:表面利回りから実質利回りへの変換、税引後キャッシュフローの算出まで一枚で完結
  • 物件評価ワークシート:物件内見時に持参し、現場で数字を書き込みながら投資判断できる
  • 減価償却シミュレーション参照シート:デッドクロス発生年の特定と、出口戦略のタイミング設計に使用

営業マンの提案書を左に置き、このワークシートを右に置いて、数字を一つずつ転記する。差異が出た項目が、業者が隠していたコストだ。

このガイドが向いている人

  • 不動産業者から提案を受けているサラリーマン・公務員——会社に営業電話がかかってきた、セミナーで個別相談を受けた、知人から紹介された。提案内容が本当に正しいか、自分で検証する手段が欲しい
  • すでに新築ワンルームを買って毎月持ち出しが発生している人——損切りすべきか保有すべきか、オーバーローンの実態を数字で把握したい
  • 楽待・健美家で情報収集しているが体系的に整理できていない人——断片的な記事やYouTubeの煽り動画ではなく、税務・融資・出口戦略をひとつの判断フレームワークに統合したい
  • 年収700万〜1,200万円で税負担を圧縮したいが、どこまでが合法な節税でどこからが課税繰り延べか判断できない人

このガイドが向いていない人

  • 初めてのマイホームを購入する方——投資用不動産の内容です
  • 「3年でFIRE」系のモチベーション本を探している方——このガイドは税率と利回りの計算マニュアルです
  • すでに5棟10室以上を運用している上級者——基礎的な検証ツールでは物足りない可能性があります

トレードオフ:自分で検証することのコスト

数字を自分で検証するには時間がかかる。表面利回りから実質利回りへの変換、返済比率のストレステスト、デッドクロスの特定——すべて手計算でやれば、1物件あたり2〜3時間は必要だ。

しかし、検証しなかった場合のコストと比べてほしい。新築ワンルームで毎月3〜5万円の持ち出しが10年続けば360〜600万円。オーバーローンで売却時に自己資金を数百万円補填するケースもある。2〜3時間の計算で回避できるリスクとしては、十分に割に合う。

テンプレートを使えば計算時間は大幅に短縮できる。不動産投資スタートガイドのROI計算テンプレートなら、業者の数字を転記するだけで実質利回りが出る。で手に入る検証ツール一式は、1回の誤った投資判断を防ぐだけで元が取れる。

よくある質問

Q. 不動産業者の話を全部疑うべきですか?

全部疑う必要はない。ただし、数字は全部自分で計算し直す。業者が誠実かどうかは関係ない。自分の金を投じる判断を他人の計算に委ねること自体がリスクだ。

Q. 表面利回りと実質利回りの差はどのくらいが普通ですか?

一般的に1.5〜3ポイント。表面8%なら実質5〜6.5%が目安。ただし地方築古物件や空室率が高いエリアでは4ポイント以上開くこともある。差が大きいほど、業者の提示する表面利回りは実態から乖離している。

Q. デッドクロスは避けられないのですか?

構造的に避けられないが、発生タイミングを事前に計算し、それまでに売却する「出口戦略」を組むことで対処できる。問題は発生すること自体ではなく、発生することを知らないまま買うことだ。

Q. 修繕積立金の値上げはどの程度想定すべきですか?

国土交通省のガイドラインでは、新築時の修繕積立金は長期修繕計画の必要額を大幅に下回っていることが多い。10〜15年目の第1回大規模修繕のタイミングで月額が2〜3倍に値上げされるのが標準的なパターン。業者が「現在の修繕積立金」でシミュレーションしている場合、将来の値上げ分が織り込まれていない。

Q. このガイドを読めば不動産投資で失敗しなくなりますか?

ならない。投資にリスクはつきものだ。このガイドが提供するのはリスクを定量化する手段——つまり、どのリスクをどの程度取っているかを数字で把握したうえで判断する能力だ。「なんとなく良さそう」で買うのと、「実質利回り4.5%、返済比率48%、デッドクロス12年目」と把握して買うのでは、同じ物件でも意思決定の質がまったく違う。

Q. 無料の情報だけで検証できませんか?

計算式自体は公開情報で入手できる。問題は、表面利回り・実質利回り・返済比率・デッドクロス・減価償却・出口の税額を一気通貫で検証するフレームワークが無料では手に入らないことだ。断片的な知識を自分で統合するコストと、体系化されたツールを使うコストを比較して判断すればいい。

まとめ

不動産業者の営業トークを見抜く方法は、実はシンプルだ。表面利回りを実質利回りに変換する。返済比率を金利5%で再計算する。デッドクロス発生年を特定する。この3つの数字が、業者の提案書と一致するか確認する。一致しなければ、差分がそのまま「業者が省略したコスト」だ。

数字は嘘をつかない。問題は、数字を自分で計算するかどうかだけだ。

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