不動産投資の利回り相場:エリア・物件種別ごとの目安と判断基準
「利回り8%の物件があります」という営業トークに乗る前に、その利回りが何を意味しているか確認する必要がある。不動産投資の利回りには2種類あり、業者が提示するのはほぼ例外なく「表面利回り」だ。本稿では、エリアと物件種別ごとの実態的な利回り相場と、投資判断に使える計算方法を整理する。
表面利回りと実質利回りの差
表面利回り(グロス利回り):年間想定満室賃料 ÷ 購入価格 実質利回り(ネット利回り):(年間賃料 × 空室率 − 年間経費) ÷ 購入価格
経費には、管理委託費(賃料の5〜7%)、固定資産税・都市計画税、火災保険料、修繕積立金、広告費(AD)が含まれる。これらを控除すると、表面利回りから1.5〜3ポイント低い水準になることが多い。
表面利回り8%の物件が実質利回り5〜6%になれば、アパートローンの金利(変動で2〜3%台)を差し引いたイールドスプレッド(投資効率)は2〜4%程度に落ち着く。
主要エリア別の利回り相場
LIFULLおよび健美家の2025年データをベースとした各エリアの利回り傾向は以下の通り。
| エリア | 物件種別 | 表面利回りの目安 | 実質利回りの目安 |
|---|---|---|---|
| 東京都心(港区・千代田区等) | 区分ワンルーム | 3〜4% | 2〜3% |
| 東京城東エリア(墨田・江東・荒川) | 区分ワンルーム | 5〜7% | 3〜5% |
| 東京23区外・隣接県(立川・船橋等) | 区分ワンルーム | 6〜9% | 4〜6% |
| 大阪市天王寺・阿倍野 | 区分・一棟アパート | 6〜8% | 4〜6% |
| 大阪市西成区・淀川区 | 区分・築古アパート | 9〜14% | 6〜9% |
| 福岡市 | 一棟マンション | 5〜7% | 3〜5% |
| 仙台市 | 一棟アパート | 8〜11% | 6〜8% |
| 新潟市 | 区分・一棟アパート | 10〜14%+ | 7〜10% |
新潟市は2025年上半期の政令指定都市利回りランキングで全種別1位を継続している。ただし高利回りには、買い手の少なさ(流動性リスク)と人口動態の不確実性が伴う。
東京低利回りvs地方高利回りの実態
東京の優位性:10年間で中古マンション価格が約1.7倍に高騰しており、キャピタルゲインも期待できる。転入超過が続くため空室期間が短く、家賃の維持力が高い。
地方高利回りの罠:高利回りのエリアほど人口流出リスクを内包している可能性が高い。表面利回り12%の地方アパートでも、空室率が30%を超えると実質収益は大幅に目減りする。
投資エリアを選ぶ際は「利回り」だけでなく「人口動態と空室リスク」を同時に分析することが必要だ。
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中古アパートの利回り目安
新規で中古一棟アパートへ投資する際の目安として、以下の利回り水準が判断基準になる。
最低ライン:実質利回りがアパートローン金利を1.5%以上上回ること(イールドスプレッド1.5%以上)
安定ライン:実質利回り6%以上(表面利回りなら8〜9%以上が目安)
高収益ライン:実質利回り8%以上(地方優良エリアの築古木造)
ただし高実質利回りほど、将来の大規模修繕リスク、人口動態リスク、売却時の流動性リスクが高まる傾向がある。表面利回り10%超の物件を見つけた場合、その利回りを実現できている理由(空室リスクが価格に反映されているのか、単に割安に売られているのか)を検証する。
利回りが「割安かどうか」を判断する方法
エリアの相場と比較するだけでなく、以下の観点で物件を検証する。
- 周辺の成約賃料との比較:レインズや不動産ポータルで現在の成約事例(直近3ヶ月以内)を確認し、提示家賃が「おとり家賃」でないか検証する
- 積算価値との乖離:路線価(土地)+ 建物再調達費用(構造別坪単価 × 延床面積 × 残存耐用年数 ÷ 法定耐用年数)を計算し、購入価格が大幅に上回っていないか確認する
- 直近の空室率:現地に行って空室の多さを目視確認する、または管理会社に現在の稼働率を確認する
不動産投資スタートガイドでは、エリア別の利回り検証シートと、積算評価の計算手順が収録されている。物件を比較する際の判断ツールとして活用できる。
まとめ
不動産投資の利回り相場は、東京都心3〜4%から地方の高利回りエリア10〜14%まで幅広い。表面利回りから1.5〜3ポイント低い実質利回りで判断し、イールドスプレッド(実質利回り − ローン金利)が1.5%以上確保できるエリア・物件を選ぶことが基本だ。高利回りは常に高リスクとセットで評価する。
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