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不動産投資による相続税対策:評価額圧縮の仕組みと注意点

不動産は現金と比べて相続税評価額が低くなるため、相続税対策として活用される資産クラスだ。しかし近年の国税庁の見直しにより、過度な節税スキームは否認されるリスクが高まっている。仕組みと限界を正確に理解したうえで活用する必要がある。

相続税評価額が低くなる3つの仕組み

1. 不動産は時価より低い評価額で計算される

相続税の計算では、財産の「時価」ではなく相続税法上の「評価額」が使われる。

土地の評価(路線価方式):路線価(国税庁が毎年公表)× 地積 × 補正係数。路線価は一般に時価の約80%程度に設定されているため、時価1億円の土地の相続税評価額は8,000万円程度になる。

建物の評価(固定資産税評価額):建物は固定資産税評価額で評価され、これは時価の60〜70%程度だ。

現金1億円と時価1億円の不動産では、相続税評価額に2,000〜4,000万円の差が生じる。この差分に対する相続税が節約できる。

2. 賃貸用不動産はさらに評価が下がる

自己居住用の不動産と賃貸用不動産では評価が異なる。賃貸に供している不動産は「借家権割合」を考慮してさらに評価が下がる。

土地(貸家建付地)の評価

貸家建付地評価額 = 自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

東京都心部の借地権割合は70〜80%、借家権割合は全国一律30%。入居率100%の場合:

例:8,000万円 × (1 − 70% × 30% × 100%) = 8,000万円 × 79% = 6,320万円

自用地評価額8,000万円が6,320万円まで下がる。

建物(貸家)の評価

貸家評価額 = 固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
例:4,000万円 × (1 − 30% × 100%) = 4,000万円 × 70% = 2,800万円

土地と建物を合わせると、時価1億円の賃貸物件が相続税評価上は6,000〜7,000万円程度になるケースが多い。

3. 小規模宅地等の特例

被相続人が賃貸事業を行っていた土地(貸付事業用宅地等)には「小規模宅地等の特例」が適用できる場合がある。

貸付事業用宅地等:200㎡まで評価額の50%が減額される。

ただし、相続開始前3年以内に新たに賃貸事業の用に供した土地は特例の対象外となる(2018年税制改正)。相続直前に慌てて賃貸物件を購入しても、この特例は使えない。

タワマン節税への規制強化(2024年以降)

2024年1月以降、高層階の区分マンション(タワーマンション)については、相続税評価額の計算方法が見直された。従来の評価額と市場価格の乖離が大きかったタワーマンションについて、評価額が市場価格の60%以上となるよう補正する制度が導入された。

過去に横行していた「相続直前に時価の10〜20%程度の評価額しかない高層マンションを購入して相続税を大幅圧縮し、相続後すぐに売却する」スキームは、現在では評価額が是正されており、以前ほどの効果は期待できない。

税務否認リスクと「合理的な経済目的」の要件

国税庁は近年、相続税対策目的のみで不動産を購入するスキームに対して「租税回避」として否認する事例が増えている。

2022年の最高裁判決では、相続開始直前に借入金でマンションを購入し、相続後に売却するスキームが「著しく不当な租税回避」として否認された事例がある。評価額の低下が本来の取引の実態を著しく逸脱すると判断された。

税務否認を避けるための要件:

  • 相続税対策のためだけでなく、収益確保・資産形成など合理的な経済目的が存在すること
  • 長期にわたる賃貸経営の実態があること(相続直前の購入は危険)
  • 購入物件が実際に収益を生んでいること

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実務的な活用のポイント

相続税対策として不動産を活用する場合の現実的な手順:

  1. 早期の計画立案:相続開始の10〜20年前から計画的に賃貸不動産を取得・運営する
  2. 収益性の確保:キャッシュフローがプラスになる物件を選ぶ(節税目的の持ち出しは長期的に継続できない)
  3. 小規模宅地特例の要件確認:3年以上前に事業を開始している必要がある
  4. 税理士との連携:相続専門の税理士と連携し、相続税・不動産所得税を一体で設計する

不動産投資スタートガイドでは、資産防衛の観点から不動産投資と相続税の関係性を整理し、長期的な資産設計の手順を解説している。

まとめ

不動産投資による相続税対策は、路線価・貸家評価・小規模宅地特例の3つのメカニズムが組み合わさって機能する。ただし2024年以降のタワマン評価見直しや、相続直前取得への税務否認リスクの高まりにより、以前のような「短期集中型の節税スキーム」は通じにくくなっている。長期的な資産形成と収益確保を前提とした、合理的な経済目的を伴う不動産運営が、持続可能な相続税対策の基本となる。

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